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犬における腎臓病マーカーSDMAの基準値を再考した王立獣医科大学の研究

投稿者:武井 昭紘

SDMA(symmetric dimethylarginine、対称性ジメチルアルギニン)は、犬および猫の腎機能(糸球体濾過量、GFR)が約40%低下したタイミングを検出する臨床検査の一つであり、早期に腎臓病を発見するために利用できる鋭敏で優れたバイオマーカーとして広く認識されている。故に、SDMAは、小動物臨床の現場では非常に信頼されており、多くの獣医師が、「SDMAの上昇=腎臓疾患の疑い・確定」という印象を強く持っているようなのである。しかし、前述した信頼感を打ち消すかのように、イギリスの王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RV)が、現在の基準値(>14μg/dLならがGFRが40%以上低下している)を基に犬のSDMAを測定する際の精度に関して、ある疑問符とそれに対する改善点を提唱した—–。

 

なお、同大学によると、イソヘキソールを用いてGFRの測定を実施された約120匹の犬を対象にして、SDMAの測定結果を解析したところ、設定された基準値では、SDMAの特異度が50%(腎臓病ではない症例が偽陽性になる確率が50%)であることが判明したとのことで、この特異度を80%以上で維持するためには、基準値を「>18μg/dL」に引き上げる必要があるのだという。

上記のことから、既存の基準値にて犬のSDMAを測定すると、偽陽性となる可能性、要するに、腎臓病がではない個体を腎臓病と診断してしまうリスクが高いものと考えられる。よって、今後、腎臓病を罹患していない多くの犬に協力をしてもらい、改めてSDMAの特異度を算出し直して、感度・特異度の何れも高い「基準値」の再設定が行われていくことに期待したい。

今回紹介した研究では、基準値を引き上げても、感度(90%)は変わらないということも分かっております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31725186


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