犬300匹に1匹、猫200匹に1匹の割合で発症する糖尿病という疾患では、体内に存在しているインスリンが枯渇すると、細胞内におけるブドウ糖の代謝が上手くいかず、その代わりに脂肪が分解され、ケトン体が多く産生されることが知られている。また、この病態に陥った動物は急激に体調を崩して、生命維持が難しい危機的な状況、いわゆるケトアシドーシスになるリスクを抱えることも広く認知されているところだと思う。しかし、一般の動物病院が実施できる臨床検査では、ケトン体の一つ、β-ヒドロキシ酪酸を直接的に検出する術は充分に確立されておらず、ケトン体が多く産生されている病的現象、または、ケトアシドーシスを迅速に正確に把握するといった観点から見ると、小動物臨床には、何処か「片手落ち」の印象が横たわっているようにも感じる。
そのような背景の中、ドイツの獣医科大学は、ヒトの糖尿病管理のために開発された携帯型ケトンメーターGlucoMen®LX PLUSを用いて、犬および猫の血液中β-ヒドロキシ酪酸濃度を測る研究を行った。なお、同研究では、臨床上健康な動物、糖尿病症例、糖尿病性ケトアシドーシスの症例が対象に、GlucoMen®LX PLUSと酵素反応によるβ-ヒドロキシ酪酸の定量法の測定結果が比較されており、全てのグループにて、両測定結果に高い相関関係が認められたとのことである。
上記のことから、GlucoMen®LX PLUSは、β-ヒドロキシ酪酸を小動物臨床で「簡便に」測定できる手法として有用であると考えられる。よって、犬猫用のGlucoMen®LX PLUSが開発され、彼らが抱える糖尿病の病態が今以上に詳細に把握できる未来が訪れることを期待している。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31814090