猫白血病ウイルス(Feline leukemia virus、FeLV)は、母子感染(垂直感染)または唾液や血液を介しした水平感染によって伝播し、感染した猫に白血病を起こすことは勿論のこと、腎臓病、血球減少症、免疫不全なども発症させることが知られている。故に、罹患猫の病態把握と治療法の検討および同居猫への感染の拡大を阻止する目的で、該当する症状を呈する猫におけるFeLVの感染の有無をウイルス抗原の検出によって確認するのだが、その際に用いるサンプルは、一般的に「血液」に限定されていることが現状である。
そのような背景の中、ブラジルのミナスジェライス連邦大学は、FeLVに感染した猫に採血のストレスを与えず、より安全で簡便な採材方法を検討する研究を行った。なお、同研究では、スワブを用いて150匹近い猫の結膜、口腔内、直腸内からサンプルが採取されており、プロウイルスとなったFeLVのDNA(gag遺伝子)をターゲットにしたPCR検査によって病原体の検出が試みられている。すると、いずれのサンプルにもプロウイルスのDNAが存在していることが確認でき、中でも、結膜スワブにおける検査の感度・特異度が90%以上となることが明らかになったとのことである。
上記のことから、「血液」以外をサンプルとしても、FeLV(プロウイルス)の遺伝子の有無をチェックすることできると言える。よって、今回紹介したPCR検査が世界各地で商業化されるとともに、既存の抗原検出法との併用で「より詳細に」FeLV感染猫の現在の病態が理解できるような検査・診断ガイドラインが作成されることに期待している。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31748326