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慢性腎臓病の猫における糞便中の短鎖分岐脂肪酸濃度の臨床的意義を探った研究

投稿者:武井 昭紘

近年、人医療において、慢性腎臓病(chronic kidney disease、CKD)と腸内細菌叢は密接に関わっており、この細菌叢の変化に伴う尿毒素(インドール[肝臓でインドキシル硫酸に変わる]、p-クレゾール硫酸)の産生増加や各種の短鎖脂肪酸の生成が、病態の進行に深く関与していると考えられるようになってきた。しかし、一方で、獣医療に眼を向けると、猫におけるCKDと短鎖脂肪酸との関連性については、未だ詳しく分かっていない。

そのような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、①CKDの猫と②8歳以上かつ臨床上健康な猫における血清中インドキシル硫酸濃度(indoxyl sulfate、IS)およびp-クレゾール硫酸濃度(p-cresol sulfate、pCS)、そして、糞便中のイソ吉草酸濃度を測定する研究を行った。すると、IRISのステージ3または4に属する①では、②に比べて、糞便中イソ吉草酸濃度が有意に上昇しているとともに、この濃度が僅かではあるがBUN、CRE、pCSと相関していることが判明したとのことである。

上記のことから、CKDの猫の腸内細菌叢は、病態の進行に関与していることが窺える。よって、今後、当該疾患に対するプレ・プロバイオディクスが開発されるとともに、炎症性腸疾患の動物に適応され始めた糞便移植の有用性についても検証されていくことに期待したい。

現在確認されている様々な疾患と腸内細菌叢に関する研究が更に進み、新たな治療法の開発・確立へと繋がることを願っております。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31693251/


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