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2018年に新たに発見された猫ヘパドナウイルスの病原性に関する研究

投稿者:武井 昭紘

猫ヘパドナウイルス(domestic cat hepadnavirus、DCH)は、2018年5月、オーストラリアの大学らによる二次感染予測プロジェクトにて新たに発見されたウイルスで、ある一年間に85万人の犠牲者を生んだヒトのB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus、HBV)に近縁の遺伝子を持ち、リンパ腫が発生したFIV(猫免疫不全ウイルス)陽性例の腫瘍組織から検出される特徴のある「病原体?」とされている。しかし、DCHの病原性は未だ解明されていない点が多く、ヒトのそれと同じように罹患猫の命を奪うほどの病原性を発揮するか否かは不明である。

そこで、オーストラリアの大学ら(シドニー、アデレード)は、臨床上健康な、または、肝・胆道系疾患を患った個体におけるDCHの保有率を明らかにする研究を行った。なお、同研究では、ホルマリン固定された肝臓組織がサンプルとなっており、in situ ハイブリダイゼーションによって当該ウイルスの有無が確認されている。すると、DCHは、肝臓系疾患(慢性肝炎の約40%、肝細胞癌の約30%)のサンプルから検出できるが、胆道系疾患(胆管炎、胆管癌)および臨床上健康な個体のサンプルからは検出できないことが判明したとのことである。

上記のことから、DCHは、ヒトのB型肝炎に類似した病態を形成することが示されたものと考えられる。よって、今後、原因不明な状況で肝数値が上昇している症例を含めて、肝臓に何らかのトラブルを抱えた猫を広く、大規模に募集し、DCHの保有率が調査されることに期待している。

家庭で飼われている猫の約7〜11%からDCHが検出されたと報告する研究もあるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31640283/


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