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犬の皮内試験に用いる抗原の「適正な」量について検討したアメリカの研究

投稿者:武井 昭紘

アレルギー性疾患、アトピー性疾患に関与していると疑われる抗原を特定する時、罹患犬の皮内に一定量の抗原を注射して局所的な生体反応を観察する皮内試験(Intradermal test、IDT)が行われることがある。そして、この際に使用される抗原の量は、アレルギー性疾患では1000 PNU/mLが標準的だとされているのだが、アトピー性疾患では、その「標準」が設定されていないーーーーー。

ここに着目して、ウィスコンシン大学(マディソン校)が、アトピー性疾患の犬におけるIDTにて用いる抗原量を検討するための研究を行った。なお、同大学によると、60匹を超えるアトピーの犬を対象にして、①1000 PNU/mLの抗原量とは別に、②5段階(3000~8000 PNU/mL)の抗原量に調整された花粉アレルゲンを皮内に接種したところ、高い抗原量ほど、IDTの陽性反応が有意差を伴って明確に発現したとのことである。また、加えて、ウィスコンシン大学は、約60%の症例で、①と②の結果が異なっていたと発表した。

上記のことから、1000 PNU/mLの抗原量では、IDTの結果が不正確になる可能性が示唆されたと考えられる。よって、今後、診断精度を向上させるために更なる研究の進展を願うとともに、花粉以外のアレルゲンについても、同様の検討がなされることに期待している。

今回紹介した研究を機に、アトピー性疾患に特化した新しいIDTがガイドライン化されると、動物医療における皮膚科診療が進化を遂げるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31642134/


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