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喉頭麻痺を起こしたミニチュア・ブルテリアから発見された遺伝子変異

投稿者:武井 昭紘

喉頭麻痺(laryngeal paralysis、LP)は、披裂軟骨を動かす筋肉(輪状披裂筋)や神経(反回神経)が障害を受け、吸気時における披裂軟骨の外転が妨げられることで症状を呈する呼吸器疾患で、様々な原因によって、あらゆる年齢の犬が発症することが知られている。また、中でも、遺伝病としてのLPは、動物福祉の観点から、ブリーディング計画の見直しを検討する上で大変に重要なヒントを与えてくれる病気であると考えられており、原因遺伝子の解析と周知が今後の獣医療の発展を左右すると言って過言でないのだ。

そのような背景の中、2019年10月、ヨーロッパの大学らは、ミニチュア・ブルテリアが発症したLPを診察したことをキッカケに、当該疾患に関与する遺伝子変異の発見を報告した。なお、同大学によると、罹患犬は、第11染色体に「挿入」された36bpの配列を原因とし、RAPGEF6遺伝子にフレームシフトと早期停止コドンの形成を起こしており、他犬種(1000匹以上の対照群)に比較して、10〜17倍もの高確率でLPに罹りやすくなっていたとのことである。

上記のことから、RAPGEF6遺伝子の変異(挿入)は、ミニチュア・ブルテリアのLPに深く関与しているものと思われる。よって、将来的に、同遺伝子の機能が詳細に分析され、呼吸困難で苦しむミニチュア・ブルテリアが1匹で多く救われるような治療法が開発されることを期待している。

今回紹介した変異(挿入)によって、RAPGEF6遺伝子の配列の60%以上が発現できなくなるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31647804/


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