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クッシング症候群に罹患した犬のQOLを評価するツールの開発

投稿者:武井 昭紘

犬のクッシング症候群は、腎臓の近傍に位置する副腎の皮質から内因性ステロイド(コルチゾール)が過剰に分泌されて生じる多飲多食多尿、筋力の低下、腹部膨満、肝酵素値の上昇、皮膚病(脱毛、石灰化)、糖尿病など、実に多岐に渡る一連の症状の総称で、中高齢以降(8歳以上)の個体に多い内分泌の病気として知られている。故に、この「全身性疾患」を罹患した犬とそのオーナーのQOL(quality of life、生活の質)は、著しく低下する場合があり、獣医学的にも、動物福祉やオーナーの精神衛生の観点からも、適切な治療が施されることが望ましいと考えられている。しかし、症例一つ一つにとって、どんな治療が適切でQOLの改善に結び付くか否かを判定する評価法は確立されておらず、治療効果の客観化が難しい状況にある。

そこで、イギリスの王立獣医科大学(RVC)は、クッシング症候群の犬における健康関連の生活の質(health-related quality-of-life、HRQoL)を測るツールの開発を試みる研究を行った。なお、同研究では、200匹を超える症例のオーナーに①32項目の質問への回答を依頼する形式が採用されており、そのデータを分析することで、最終的に②19項目の質問に改編されたツールが作成されたとのことである。また、RVCは、①と②が正の相関を示すこととともに、トリロスタンが加療されたクッシング症候群の犬では、加療されていない群に比べて、有意にHRQoLが改善することを確認できたと発表をしている。

上記のことから、今回紹介した研究で開発されたHRQoL評価ツールは、クッシング症候群を罹患した犬とそのオーナーの「生活の質」を推し量れる有用な手法であると考えられる。よって、今後、再現性が立証され後、世界各地の動物病院で直ちに実践できるように、本ツールのガイドライン化が進められることに期待したい。

この研究に参加したオーナーらは、愛犬の外見の獣医学的な変化よりも、自分自身にとってインパクトの強い臨床症状の発現を、生活の質に関わる重要な問題だとして回答する傾向が強かったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31660657/


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