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TPLOを適応した犬の術後管理における抗生剤使用の是非に関する研究

投稿者:武井 昭紘

感染が否定的、または、何らかの理由で免疫力が低下していなければ、滅菌状態が良好に保たれた整形外科手術において、原則、症例に抗生剤を投与する必要は無いということは、多くの先生方に賛同して頂けるものと推察している。しかし、執刀医の経験や考え方、あるいは、自らの手技に対する自信の有無によって、理論上は不要とされる抗生剤を「予防的」に使う獣医師は珍しくなく、その使用の是非が議論の的になることは少なくないと思われる。

つまり、
『果たして、抗生剤を予防的に使う臨床上の意義は存在するのか?』
ということが、疑問として浮かび上がってくるのだ。

 

そのような背景の中、アメリカにて大規模な動物病院の運営を行うVCAグループらは、脛骨高平部水平化骨切り矯正術(TPLO)を適応された犬300匹以上を対象に、術後、経口的に投与された抗生剤の役割について、症例データを解析する研究が実施した。なお、同研究では、①約30件の抗生剤を投与されていない群と②約280件の抗生剤を投与された群で比較されており、VCAグループによると、両者の間で、術後に感染が生じた割合に有意差は認められなかったとのことである。

 

このことから、術後に「予防的な」効果を期待して投与されている抗生剤に、実際は、予防という臨床上の意義が存在しないことが窺える。よって、薬剤耐性菌の出現リスクを念頭に置くと、TPLOを適応した症例の術後管理には、感染が成立していない限り、抗生剤を使用する必要はないと明言できるのではないたろうか。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31664725


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