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採血を行う体の部位ごとに測定した犬の血糖値を比較した研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトも、犬猫も、血液中を流れるグルコースの値が病的に上昇する、いわゆる糖尿病に罹患することが広く一般にも知られており、多くの症例において、日常的に血糖値を測定しながら、毎日、インスリンの皮下注射で高い血糖値を下げる治療が適応されている。しかし、小動物臨床では、「自宅での血糖値の測定」に使われるポータブル型のグルコースメーター(portable blood glucose meter、PBGM)に表示される血糖値は、動物病院に備え付けの血液生化学検査機器が弾き出す「それ」よりも低い値が出てしまうことがデメリットであると言われており、厳密な糖尿病管理には幾ばくか心許ない精度になってしなうことが現状となっている。

そのような背景の中、テネシー大学は、臨床上健康な犬を対象に、血液生化学検査用の血液を採取することの多い①サフェナ(外側伏在)静脈からの血液サンプルと、②手根パッド、③耳介、④口腔粘膜から得られた血液サンプルを用いて、PBGMに表示される血糖値の相違点について検証を行った。すると、①に比較して、②および④では有意に異なる数値がPBGMに表示されたとともに、③では有意差の無い、つまり、①と近似した数値が示されることが明らかになったとのことである。

上記のことから、血糖値は、同一個体であっても採血する部位によって変動することが窺える。よって、自身が担当する症例のオーナーに自宅での血糖値測定をお願いする場合は、血液サンプルを耳介から採取するように指示をすることが望ましいと思われる。

今回紹介した検証に参加した供試犬では、絶食12時間での血糖値と食後の2時間での血糖値に有意差はなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31644346


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