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恐怖に満ちた表情を示す犬が抱えていた焦点性てんかん

投稿者:武井 昭紘

「てんかん」とは、脳に存在するニューロンの異常な活動によって生じる非誘発性の発作を起こす病態のことで、脳全体に異常な放電が発生して神経症状を呈するものを全般発作、脳の一部に異常放電が発生するものを焦点性発作と呼んでいる。また、人医療にて前述のように分類した時、後者の焦点性発作を抱えるヒトには、神経症状とは別に「精神的な変化」をきたす方がおり、恐怖心に襲われる場合があることが知られている。しかし、犬の焦点性発作(焦点性てんかん)において、ヒトが感じている恐怖に類似した感情を体感しているか否かについて調べた報告は無い。

そこで、オランダのユトレヒト大学らは、南アフリカ共和国原産のボーアボール5匹を対象にして、焦点性てんかんに関する研究を行った。なお、同研究に参加した供試犬は、全頭が同腹仔で、且つ、大声で遠吠えを繰り返すとともに「恐怖」に満ちた表情を見せるという問題行動を抱えており、震えるような発作を認める症例であったという。加えて、大学らによると、彼らのCBC、血液生化学検査、脳脊髄液検査、MRI検査には、明らかな異常所見はみられず、表現型(症状の有無)から類推した遺伝様式は常染色体劣性遺伝を示唆するものであったとのことから、5匹のボーアボールは「恐怖に伴う行動を示す焦点性発作」に罹患していたと結論づけたとのことである。

上記より、ヒトと同様に、犬も焦点性発作と「それに続く恐怖心」を感じることが窺える。よって、今回紹介した研究を基にして、『うちの子は怖がりだ』と思っているオーナーが飼育する愛犬を母集団にした大規模な臨床研究へと進展すれば、小動物臨床における焦点性発作の実態と疫学が解明されていくことが期待できるのではないだろうか。

本研究では、剖検による脳の病理組織学的検査も実施されており、罹患犬の大脳皮質に空胞変性が認められたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30580458


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