ニュース

動物病院を嫌がる犬の恐怖心を和らげるトレーニングに関する研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床に携わっていると、動物病院の醸し出す雰囲気がそうさせるか、あるいは、スタッフが着ている制服に、薬品類の匂いに、医療機器の動作音に反応しているのか、強い恐怖心を感じさせるリアクションをする動物たちに出逢うことがある。また、おそらく、その様子を傍らで目の当たりにする獣医師・動物看護師らは、『そこまで怖がらなくても…』と申し訳ない気持ちを抱いてしまうことも少なくないものと推察する。

 

果たして、動物病院の何かしらに怯える動物たちと助けたいと願う想いで彼らに接するスタッフ、両者を、恐怖や申し訳なさに囚われない良好な関係性に保つ手段はないものだろうか—–。

 

2019年10月、ここに、ある一つの回答を示した研究が発表された。

なお、発表を行ったカナダのゲルフ大学によると、動物病院を訪れる度に恐怖心に襲われた様子をみせる犬を対象にして、ヒトに対しても適応できる「恐怖を緩和させる」行動療法、いわゆる、脱感作および逆条件付けトレーニングの効果を検証したところ、対照群(トレーニングをしないグループ)と比べて、動物病院に入る時と診察時の何も、トレーニングをした群では有意に恐怖レベルが低下したとのことである。

上記のことから、脱感作(弱い刺激に慣れること)および逆条件付け(恐怖を感じている時に報酬を与えること)によるトレーニングは、動物病院を嫌がる犬の恐怖心を和らげる効果があると考えられる。よって、診療レベルの向上(フレンドリーな獣医療サービスの提供)をするにあたり、犬と更に仲良くなりたい獣医師・動物看護師は、これらのトレーニング方法を学び、臨床現場に活かすことが望ましいと思われる。

今回紹介した研究の課題点は、オーナー判断でトレーニングの実施内容にバラつきが出てしまっていることなので、均一のトレーニングを積んだ母集団で改めて検証をし直すことが出来れば、更に、良い結果が得られるかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31591343/


コメントする