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骨肉腫症例の予後を向上させる試験的研究~関節リウマチの治療薬オーラノフィンの小動物臨床応用~

投稿者:武井 昭紘

オーラノフィンは、チオレドキシン還元酵素2を阻害する作用を有する有機金化合物で、体内で起きる酸化還元反応を調整することによって抗炎症効果を発揮するため、関節リウマチの治療薬として製品化された薬物である。一方、このチオレドキシン還元酵素2は、骨肉腫を形成する腫瘍細胞の肺転移(死因の一つ)に深く関与するドライバー分子としても知られており、実験段階にて、同酵素のオーラノフィンによる阻害が、肺転移を抑制するとの報告が上がっている。

つまり、これらの事実を総合して、小動物臨床に応用するのであれば、
「オーラノフィンによる肺転移の抑止は骨肉腫症例の予後を向上するのでは?」
という仮説を立てることができるのだ。

 

そこで、オーストラリアの大学らは、骨肉腫に罹患した犬を対照にして、①既存の治療法(腫瘍切除術とカルボプラチンの併用)と②既存の治療法にオーラノフィンの投与(6-9mg/head q3d)を加えた手法における経過の違いを追跡する試験的研究を行った。すると、①に比べて、②の生存率が改善していることが判明するとともに、②の25%にあたる症例は、臨床検査上での特筆すべき病的現象を伴わずに、約800~1500日もの長期間生存したことが確認できたとのことである。

上記のことから、オーラノフィンは、骨肉腫を抱える犬の予後を向上させる力を秘めていると考えられる。よって、今後、安全性試験および有害事象の解析を経て、犬にオーラノフィンを投与する際の用法・用量が決定されていくことに期待している。

②のうち、オス犬のみで統計学的な解析を行うと、生存率が更に改善するとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31441983


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