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犬に起きる原因不明の脳脊髄炎を免疫学的に分類するための挑戦的研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床では、犬に起きている脳脊髄炎に対する診断を下す際、MRI検査と脳脊髄液検査によって病原体の有無を確認し、感染が否定された症例は、病因論上、meningoencephalitis of unknown etiology(MUE)、つまり、「原因不明」の脳脊髄炎に分類されることが通例となっている。しかし、一方で、人医療に目を向けると、感染が認められない脳脊髄炎は、MUEに一纏めに括られることはなく、神経細胞表面に存在する抗原に対する抗体を検出する精査によって、自己免疫性脳炎(autoimmune encephalitis)の可能性が探られることが一般的である。

そこで、ノースカロライナ州立大学ら、冒頭に記したような両医療を隔てる「差」を埋めるべく、神経系疾患を罹患した犬を対象に、自己免疫性脳炎の診断を下すための挑戦的研究を行った。なお、大学らによると、6種類の抗原に対する抗体を標的とし、30匹を超える中枢神経系疾患が疑われる症例を調査した結果、3例において、抗NMDA受容体1(N-methyl-d-aspartate receptor 1)抗体が検出されたとのことである。

上記ことから、犬も、ヒトの自己免疫性脳炎に相当する神経系の病気を罹患することが窺える。よって、今後、本研究よりも母集団を増やした大規模な研究が計画され、抗NMDA受容体1抗体のみならず、人医療で報告が上がっている様々な抗体をターゲットにして、MUEの犬を免疫学的に細分類する動きが活発になることを期待している。

本研究で発見された抗NMDA受容体脳炎3例は、MUEに対する治療に反応することも確認されております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31495976


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