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うっ血性心不全に陥った猫を判別できる血液中マーカーに関する研究

投稿者:武井 昭紘

細胞の増殖・分化を制御しているTGF-βスーパーファミリーというサイトカインの一種に分類される増殖分化因子(Growth differentiation factor、GDF)-11は、マウスにおいて心肥大を軽減する効果を発揮し、血漿中濃度が低下するとヒトに心肥大を起こすことが知られている。しかし、小動物臨床の現場にて遭遇する猫の肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy、HCM)とGDFとの関連性は、解明されていないのが現状である。

そこで、アメリカの大学ら(タフツ、ハーバード)は、猫における血漿中GDF濃度について解析する研究を行った。なお、同研究では、①臨床上健康な猫、②HCMまたは閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy、HOCM)の猫、③うっ血性心不全を伴ったHCMの猫を対象にしており、GDF-11およびGDF-8(GDF-11と高い相同性を示す)の血漿中濃度が測定されている。すると、三者間で血漿中GDF-11濃度に差異は認められないものの、①②と比較して、③で血漿中GDF-8濃度の低下が確認できたとのことである。

上記のことから、猫の循環器診療では、GDF-11ではなく、GDF-8が有用なマーカーとなり得ることが窺える。よって、今後、血漿中GDF-8濃度測定が商業化されるとともに、症例数を増やした大規模研究が進められていくことに期待している。

NT-proBNPとGDF-8の有用性を比較する研究も実施されると、更に新たな発見があるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31568985


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