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糖尿病の犬に立ちはだかるアメリカの厳しい現実を打破するための試験的研究

投稿者:武井 昭紘

アメリカ合衆国で7000万匹を超える飼育頭数に達している犬において、その1%、約70万匹が糖尿病だと推計されている。しかし、これ程までに莫大な数の罹患犬に対して適応できる獣医療は、現在、長期的(半永久的)なインスリン補充療法と血糖値のモニタリングであり、この実状は過去50年もの長きに渡って特段の変化・進化を遂げていないものとなってしまっている。それが故か、同国において、愛犬が糖尿病だと分かったオーナーの40%が、診断1日目にして安楽死を希望すると言われており、彼らが飼育する犬たちの生存期間は、何と、「診断から57日」、2ヶ月にも満たないという非常に厳しい数字を示しているのである—–。

 

そこで、この「変わる兆しが見えない現実」を打破しようと、アメリカの大学および動物病院が立ち上がり、ある研究を行った。なお、研究を発表した大学らによると、犬の脂肪組織由来幹細胞( adipose-derived stem/stromal cell : ASC)と膵島細胞(islet cells、ICs)の供培養を基にしてcanine Neo-Islets (cNIs)という移植用の細胞を作成し、糖尿病を自然発症した犬の腹腔内に投与したところ、投与前に必要としていたインスリン製剤の用量が最大50%も低下させられることが確認できたとのことである。

上記のことから、cNIs療法が、インスリン製剤からの脱却、または、インスリンの投与回数・日数の減らすことが可能になる程に有用性が認められれば、犬における糖尿病管理の現状が大きく激変することが期待できる。よって、本研究の更なる成功を祈るとともに、それに続く、罹患犬の安楽死件数(冒頭にて述べた内容)の減少を願っている。

今回紹介した研究では、インスリンの用量減少効果は、cNIs療法1ヶ月目から発現したとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31536503


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