ニュース

犬と猫における血漿中カリウム濃度の変動に潜む臨床的意義を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

電解質異常の一つに含まれる血漿中カリウム(K)濃度の変化は、主に、筋肉の脱力、ふるえ、不整脈などの神経筋系および心血管系症状を罹患個体に齎すと言われており、小動物臨床では、血漿中K濃度が3.5 mEq/L以下または5.5 mEq/L以上を示した時に、それぞれ低K血症、高K血症と診断されている。しかし、一方で、一部の成書の見解を参照すると、低K血症では3 mEq/L以下、高K血症では6.5 mEq/L以上にまで達しないと、前述した一連の症状は現れないと記されていることも事実である。つまり、血液中のKの病的変動には、「3.5 mEq/L以下または5.5 mEq/L以上」という定義と、「3 mEq/L以下または6.5 mEq/L以上」という臨床的意義との間に、ギャップが存在していると言えるのだ。

 

そのような背景の中、カリフォルニア大学は、付属動物病院の救急科に来院した1900匹を超える犬と500匹を超える猫の診療記録から、血漿中K濃度、臨床症状、予後のデータを集積し、統計学的に解析する研究を行った。なお、得られた結果は、以下の通りである。

◆血漿中K濃度の変動(カリウム異常)に潜む「真」の臨床的意義◆
・低K血症は3.5 mEq/Lを下回り、高K血症は5.0 mEq/Lを上回る状態と定義する
・3.0 mEq/Lを下回る、または、6.0 mEq/L以上の場合を中程度~重度のカリウム異常とする
・犬では、軽度のカリウム異常(3.0~3.5 mEq/L、または、5.0 mEq/Lを超えて6.0 mEq/L未満)であっても、有意に死亡率が上昇する
・中程度~重度の低K血症を認める犬、中程度~重度の高K血症を認める犬猫では、有意に死亡率が上昇する
・中程度~重度の低K血症は、消化器症状と関連している
・中程度~重度の高K血症は、尿路系疾患と関連している

 

上記のことから、今回紹介した研究は、冒頭で述べた臨床的意義とは異なる「カリウム異常の真の姿」を捉えることに成功したと考えられる。よって、犬では軽度のカリウム異常(有意に上昇する死亡率)が判明した時点で、猫では中程度~重度のカリウム異常が判明した時点で、臨床症状の有無と集中管理の必要性を検討する必要があるものと思われる。

同研究にて、猫における軽度のカリウム異常では、死亡率は上昇しないことも分かっております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31482659


コメントする