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母犬と胎仔を繋げる胎盤の特徴と子犬の低出生体重との関連性を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

ヒトの産科において、低出生体重とは、胎児が生まれる時の標準的な体重よりも軽い体重のことで、具体的には、2500g未満を意味する。加えて、この低出生体重は、母体と胎児を結ぶ胎盤の構造(いわゆる胎盤因子)によって生じるとされているとともに、新生児(胎児)のその後の人生に大きな影響を与えることがあり、出生後の死亡率を高め、また、無事に育ったとしても、運動機能の発達を遅らせ、知的障害に陥るリスクを齎すことが知られている。一方で、小動物臨床に眼を向けると、同腹の個体よりも体重が軽く、いわば低出生体重で生まれる子犬が居るのだが、彼らと母犬を繋げていた胎盤の特徴については、殆ど研究されていない。

そこで、イタリアのピサ大学は、トイ種を含む小型犬を対象に、子犬の体重と胎盤の構造学的特徴との間にある関連性について検証を行った。なお、同検証では、新生仔の体重を生後6日目まで測定するとともに、胎盤の重量および画像から算出した総胎盤面積(Total Placental Area、TPA)、総血管面積(Total Vascular Area、TVA)、胎仔と連結している胎盤の面積(Transfer Zone Area、TZA)のデータが集積されている。その結果、同大学によると、低体重の胎仔が繋がる胎盤は軽く、TPA、TVA、TZAのいずれも胎仔の体重と正の相関関係にあることが確認できたとのことである。

上記のことから、犬にも、ヒトと同様に、胎盤因子なるものが存在していることが窺える。つまり、胎盤の大きさ(重量、面積、血管の豊富さ等)に伴って、胎仔の大きさ(体重)は決まると言えるのではないだろうか。よって、今後、人医療に習いつつ、本検証が更なる発展を遂げ、低出生体重の子犬における死亡率、運動機能、学習能力についても分析されていくことに期待している。

新生仔の猫を対象にした同様の研究も進められると、新たな発見が出てくるかも知れません。

 

参加ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31479776


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