近年、ヒトおよび動物の医療分野において、腸内細菌叢と病気に関する研究が注目を浴びており、人医療では、糞便移植(fecal microbiota transplants、FMT)を治療法として確立する動きが大きくなりつつある一方で、獣医療では、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD)、糖尿病、肥満などと腸内細菌叢の変化との関連性について報告する論文が、次々と発表されている。故に、これらの動向を見るにつけ、筆者は、ヒトに追い付け追い越せとばかりに猛追する小動物臨床の姿に感心を抱き、応援したくなる次第である。
そこで、2019年8月に公開されたオンタリオ獣医科大学(Ontario Veterinary College、OVC)の世界初の取り組みについて紹介したい。
なお、OVCによると、IBDの診断を受けたパグに対する治療を検討する上で、冒頭に記したような背景を鑑み、臨床試験という枠組みにて、人医療で行われているFMTを症例に適応することを決定したとのことである。また、この世界初の試みが成功すれば、薬物療法の副作用に苦しむ動物たちを救えるとともに、人医療におけるFMTをも進化させることが出来ると、同大学は続ける。
上記のことから、動物医療業界にも、将来的に、FMTが普及していくのかも知れない。よって、その未来が訪れた時に、様々な疾患を抱えた数多くの動物のQOL(症状)を改善し、命が守るれるように、「腸内細菌叢とペットの病気に関する研究」が、更なる発展を遂げることを期待したい。
参考ページ:
https://ovc.uoguelph.ca/pettrust/news/poop-scoop