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短頭種気道症候群の犬における術後の緊急事態を予測する「術前」スコアリングシステム

投稿者:武井 昭紘

フレンチ・ブルドッグに代表される短頭種は、他の犬種と比べて日常生活の中でも呼吸がしづらい状況に陥ることが知られており、その一連の現象は短頭種気道症候群(brachycephalic obstructive airway syndrome 、BOAS)と呼ばれ、呼吸に纏わる諸問題を解決するために、罹患個体の一部には外科手術(鼻孔拡大術、軟口蓋切除術など)が適応されることがある。しかし、BOASのように、呼吸状態にトラブルを抱えていることは、すなわち、麻酔下および術後経過における急変のリスクを孕んでいるいることと同義であり、治療のために外科手術へと臨んだはずが、一転して、それをキッカケにして生命の危機に瀕する事態になることは、何も珍しいことではない。要するに、視点を変えて前向きな表現にすると、先に述べたリスクが「術前に」把握できるならば、個体ごとに、外科手術適応の是非を「前もって」判定することが叶うと言えるのだ。

 

そこで、北米の大学らは、BOASに対する外科手術が施された短頭種における術後の急変を予測するスコアリングシステム(BRiskスコア)の開発を行った。なお、同大学らによると、以下の6つのチェックポイントをスコア化(10点満点の評価)して、手術後に起きる酸素吸入(48時間以上)または気管切開術の必要性や致死的経過の有無との関連性を検証したところ、スコアが3点以上の個体は、3点未満の個体に比べて、約9倍もの高確率で急変しやすいことが明らかになったとのことである。

◆BRiskスコアの算出に用いるチェックポイント◆
1.品種
2.過去の手術歴
3.BOASの治療に適応する術式
4.BCS
5.気道の状態
6.入院時の直腸温

 

上記のことから、BRiskスコアは、BOASを呈する犬の術後経過を「術前に」察知する有用な手法であると考えられる。よって、今後、再現性に関する更なる検証が進み、BRiskスコアが、一次診療施設で直ちに実践できるスコアリングシステムとして確立されていくことに期待したい。

今回紹介した検証には、スコアリングシステムの開発段階で、200匹を超える短頭種が参加しているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31350865/


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