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免疫介在性疾患を患った犬の予後を左右するビタミンDについて解析した研究

投稿者:武井 昭紘

ビタミンD(VD)は、食べ物または紫外線の力を借りて体内で生成される物質で、胃や歯の発育、小腸でのカルシウム(Ca)・リンの吸収、血液中Ca濃度の調整等々、実に様々な働きを担っている必須栄養素である。また、一方で、近年では、VDと犬の腫瘍性疾患VDとICUに入院した犬の予後などに関する研究が示す通り、病気と深い繋がりを有するファクターあるいはマーカーとしても注目を浴びるようになってきた。つまり、現代の医療・獣医療から見たVDは、中学・高校で習う作用を遥かに超越した、底が知れない程に「未知」の生理活性物質とも言えるのだ。

そのような背景の中、アメリカのコーネル大学は、免疫介在性疾患(immune-mediated disease、IMD)に罹患した犬における血清中のVD群〔25(OH)D3、1,25(OH)2D3、24,25(OH)2D3〕の濃度と生存期間について解析を行った。すると、VD群のうちの一つ、25(OH)D3濃度の中央値を下回る値が検出された症例は、中央値以上の値を持つ個体よりも、生存期間が短くなることが判明したとのことである。

上記のことから、IMDを抱える犬の治療方針をオーナーと相談する際に、血清中25(OH)D3濃度の測定が、有用性の高いツールになる可能性を秘めていると考えられる。よって、今後、IMDに属する各疾患ごとに細分化し、「予後とVDの関係性」が一つずつ丁寧に解明されていくことを期待している。

本研究では、INF-γに応答した細胞が分泌するCXCL10というケモカインも分析されており、臨床上健康な犬では検出されず、IMD症例の60%で検出されていることも分かっております(検出されると生存率が下がります)。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31417914


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