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大型犬ゴールデン・レトリバーの性腺摘出術に伴うデメリットに関する統計学

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における主な診療対象動物である犬猫には、生殖器・泌尿器・皮膚疾患、問題行動等を予防、あるいは、治療する目的で性腺摘出術を適応することが一般的である。しかし、病気の予防・治療というメリットの裏側には、頻尿、脱毛、体重増加、肉芽腫(縫合糸関連、断端腫)などのデメリットが発生する可能性が潜んでいると言われる場合もあり、性腺摘出術を実施するタイミングや施術の是非が、常に議論の的となっている。

そのような背景の中、コロラド州立大学らは、動物福祉の向上を念頭にして、性腺摘出術を受けた大型犬(ゴールデン・レトリバー)の健康被害、つまり「デメリット」に着目して、統計学的解析を行った。なお、同研究では、性腺摘出術歴の有無と、①過体重・肥満(9段階評価の7以上)、または、②整形外科疾患(前十字靱帯断裂、変性性関節症)の発症リスクを算出し、以下の通りに発表している。

 

◆性腺摘出術に伴うデメリットに関する統計学◆
・年齢に関わらず性腺摘出術を受けると、約1.6~2.2倍、過体重・肥満になりやすくなる
・6ヶ月齢より前に性腺摘出術を受けると、約4倍、整形外科疾患を罹患しやすくなる

 

上記のことから、大型犬であるゴールデン・レトリバー、特に6ヶ月齢より若い個体では、性腺摘出術をキッカケにした体重増加によって、整形外科疾患の発症リスクが格段に上昇することが窺える。よって、ゴールデン・レトリバーの去勢手術・不妊手術を検討しているオーナーに対してのインフォームド・コンセントに、手術を受けるタイミングと術後のデメリットへの注意喚起を組み込むことが望ましいと思われる。

ゴールデン・レトリバー以外の大型犬についても、同様の研究が行わて発症リスクが算出され、動物福祉がより一層向上していくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31314808


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