ニュース

フィンランドにおけるDirofilaria repensとDirofilaria immitisに関する医療関係者の知識を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

2017年、北欧三国の一つ、フィンランドに在住する女性がDirofilaria repensD.repens)に感染していることが確認されて以来、近年の異常気象を味方に付けるように、ディロフィラリア属の寄生虫が世界的に北上している懸念が生じており、緯度の高い国々でも、糸状虫症への防疫対策を講じる必要性が論じられるようになってきた。しかし、いずれの病原体でも同様であるが、その国で医療に従事するスタッフの知識が「対策の必要性」に追いついていなければ、感染症の発生を抑えることは難しいということも事実で、安定した防疫を達成するために、彼らが現在知り得ている情報を把握することが非常に重要なことであると考えることができる。

そこで、ヘルシンキ大学らは、フィンランド国内で働く医師および獣医師を対象にして、D.repensDirofilaria immitisに纏わる疫学に関するアンケート調査を実施し、以下の通り、発表した。

◆ディロフィラリア属2種に纏わる疫学の認知度調査◆
・約200名の医師、約60名の獣医師から回答を得た
D. repensがヒトに感染することを知っていたのは、医師の約3%、獣医師の約60%である
D. repensが犬に感染することを知っていたのは、医師の約8%、獣医師の約89%である
D. immitisがヒトに感染することを知っていたのは、医師の約8%、獣医師の約43%である
D. immitisが犬に感染することを知っていたのは、医師の約10%、獣医師の約98%である

 

上記のことから、「ディロフィラリア属の寄生虫2種による感染症はズーノーシスである」という基本的事項から周知徹底していくことが、北上を続けるフィラリア症の脅威を抑え込む防疫の第一歩になると言えるのではないだろうか。よって、日本で言うところの「卒後教育」が、フィンランドにて積極的に開催され、フィラリアに関する正しい知識が広まっていくことに期待したい。

本研究のアンケートに対して、「わからない」と回答した先生方もおられたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31407955


コメントする