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肝リピドーシスに罹患した猫における脂質代謝を遺伝学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

猫のリピドーシス(feline hepatic lipidosis、FHL)は、肝臓における脂肪の沈着と動員のバランスが崩れたことに伴って起きる肝細胞内のトリグリセリド(グリセリンと3つの脂肪酸)の蓄積を主体として、非常に重い胆汁うっ滞(肝内)と肝不全を生じる疾患として知られており、無治療では致死的経過を辿るとされている。しかし、この病態に陥る原因やメカニズムについての詳細は解明されていない部分が多く、今後、獣医学が取り組むべき課題となっている。

 

そのような背景の中、オランダのユトレヒト大学は、肝臓組織での脂質合成が、冒頭に記したトリグリセリドの過剰な蓄積に関与するか否かを明らかにする研究を行った。なお、同研究では、以下に示す4つの遺伝子発現を、①臨床上健康な猫とFHL症例で比較して定量的に比較している。

◆研究対象となった脂質の合成に関わる4つの遺伝子◆
1.α型ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR-α)
2.γ型ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR-γ)
3.脂肪酸合成酵素(FASN)
4.ステロール調節配列結合蛋白(SREBF-1)

 

大学の発表によると、4つのうち、有意差が認められたものはSREBF-1のみであり、①に比べて②で約10倍のダウンレギュレーション(発現量の低下)が起きていたとのことである。

この結果は、果たして、何を意味するのか?
これからの研究の発展に期待したい。

今回紹介した研究で確認されたSREBF-1のダウンレギュレーションは、FHL症例を特定する診断マーカーとして有用かも知れませんので、新しい診断法の確立という視点からも、研究が進められることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31322470


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