移行上皮癌(Transitional cell carcinoma、TCC)は、犬の膀胱に発生する最も一般的な悪性腫瘍で、罹患個体に排尿困難や血尿などを発現し、最終的に骨と肺に転移する挙動を見せる。また、このTTCは、化学療法への反応性が乏しいため、外科手術(発生部位により術式は異なる)が適応される癌種なのだが、一方で、腫瘍組織にてシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)が過剰に発現している特徴から、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)がQOLの改善に一役買う腫瘍性疾患としても知られている。加えて、ヒトのTCCでは、リポキシゲナーゼ5(LOX-5)もアップレギュレーションを起こしており、LOX-5阻害薬が有効であるとの報告も上がっている。
しかし、犬のTCCにおけるLOX-5の発現については、詳しいことは分かっていないーーーーー。
そこで、リバプール大学は、以下の3群の膀胱組織を用いて、LOX-5の発現の有無を免疫組織学的に確認する研究を行った(結果も併記する)。なお、いずれの症例も、NSAIDs、ステロイド剤、化学療法剤による治療は受けていないとのことである。
◆グルーピングとLOX-5の発現率◆
①臨床上健康な犬:10%
②膀胱炎症例:23%
③TCC症例:95%(①および②との有意差あり)
上記のことから、犬のTCCにも、LOX-5阻害薬が奏効するものと仮定できる。よって、今後、LOX5阻害薬の安全性を検証するとともに、LOX-5阻害薬の用法・用量に関する研究が進み、犬のTCCに対する治療方法がアップデートされることを期待している。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/31375151/