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炎症性腸疾患に罹患した犬の腸における免疫機能を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

炎症性腸症(Inflammatory bowel disease、IBD)は、何らかの理由によって腸に病理組織学的変化を伴った炎症が生じ、下痢・嘔吐などを呈する消化器疾患であり、人医療では、腸内細菌叢(常在菌)を特異的に攻撃するIgGまたはIgAが腸管粘膜に存在していることが発症の一因なのではないかという報告が上がっている病的現象だ。しかし、一方で、小動物臨床では、前段に記したIgGやIgAが主体となった、いわゆる局所免疫とIBDの病態との間にある関連性について、未だ全容は解明されていない。

 

そこで、コロラド州立大学は、①臨床上健康な犬と②IBDに罹患した犬を対象に、フローサイトメトリーを用いて、両抗体が腸内細菌に結合する割合と量を解析する研究を行い、以下の事項が明らかになったことを発表した。

◆IBDに罹患した犬の腸内免疫の特徴◆
・①に比べてIgGに結合した腸内細菌の割合と量が有意に増加している
・①に比べてIgAに結合した腸内細菌の割合が有意に増えている
・血清中の抗体が腸内細菌を認識する程度は①②ともに差異は無い

 

上記のことから、腸における局所免疫の状態が、IBDの発症に大きく関与していることが窺える。よって、今回紹介した研究を基に、腸粘膜で働く抗体の機能を抑制する治療法(副作用が最小限になったものが理想的)が開発されることを期待している。

IBDの犬の腸内に存在している抗体は、特に、コリンセラ属という常在菌に結合しているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31369623


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