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舌の大きさに着目して短頭種の解剖学的特徴を分析した研究から考える新たな外科療法

投稿者:武井 昭紘

短頭種は、気道症候群(brachycephalic obstructive airway syndrome、BOAS)と呼ばれる呼吸器のトラブルを抱えやすい犬種として知られており、このBOASが発症には、鼻孔の狭窄、軟口蓋の過長、気管低形成、反転喉頭小嚢などが深く関与していると考えられている。故に、列挙した原因に対する外科手術によって、呼吸状態の悪化を防ぐ治療が行われることがあるのだが、手術に臨んだ全ての症例が良好な経過を辿る訳ではなく、術前後で症状が変わらない、または、術後の方が悪化する個体も少なくない(救急救命を要する場合もある)。詰まるところ、この現実を率直に受け止めると、既存の手法では対応できないBOASの症例が存在しているのではないかと推察できるのだ。

そこで、アメリカの大学ら(ミシガン、ノースカロライナ)が発表したある研究を紹介するとともに、今まだ机上の空論かも知れないが、新たな外科療法を、ここに提唱したい。

 

なお、同研究によると、①短頭種と②中頭種(レトリーバー種、プードル、柴など)における舌のサイズを比較したところ、体重、頭蓋骨の長さ、頭蓋骨の長さと幅の比、以上3点に対する舌の容積の割合が、②よりも①の方が大きく、密度に換算して10倍の差(②に比べて①の方にて気道を通る空気の量が60%も減少すること)が確認できたとのことである。そのため、両大学らは、短頭種は、生まれつき口腔内の容量に対する舌の大きさが相対的に大きい状態、つまり、macroglossia(巨舌症)であると結論付けているのだ。

 

上記のこと加えて、巨舌症は睡眠時無呼吸症候群(気道閉塞)の一因として挙げられ、舌形成術(舌縮小術)が適応されることを考慮すると、短頭種気道症候群を治療する外科手術の方式として、舌形成術を検討する価値はあるのではないかと言える。

 

この仮説は正しいか否か、実行可能性は高いのか低いのか。
更なる文献の検索を伴って、筆者なりの一定の結論を導き出していこうと思っている。

巨舌症のヒトは歯並びが悪くなるとのことなので、短頭種の歯列を頭に浮かべると、「短頭種=巨舌症」は理にかなっているのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31361346


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