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National Immunization Awareness Monthに設定された8月に改めて考える狂犬病の防疫対策

投稿者:武井 昭紘

8月は、National Immunization Awareness Monthに設定されており、ワクチン接種に代表される「免疫力を付けること」の重要性を啓蒙する月間となっている。そこで、早速ではあるが、筆者なりに、この世界的な予防医療への意識の高まりへと参加したく、本稿では、狂犬病に対する防疫に関して見解を記す。

 

日本における犬の登録頭数は632万匹。
狂犬病ワクチンを接種した頭数は451万匹。
接種率は71.3%。

厚生労働省が発表した狂犬病に纏わるビッグデータによると、シャルル・ニコルの法則(接種率70%)を辛うじて、ギリギリでクリアしていることになる。ところが、ここに、ペットフード協会の調査結果を組み合わせて数値を補正すると、状況が一変するのだ—–。

具体的に述べると、その状況とは、同協会の調査対象となった犬を飼育する世帯を母集団とした時に、毎年、17%前後の割合で『登録をしていない』と回答する世帯が存在していることに始まる。つまり、母集団の83%しか、狂犬病予防法に乗っ取った「登録」という手続きをしていないのである。

 

以上のことを基に、数学的視点を加えて更に話を進める。

厚生労働省の言う「登録頭数=632万匹」を、母集団の83%だと仮定しよう。
すると、登録されていない犬も含めた母集団(真の母集団)は、632万匹÷0.83=761万匹となる。
よって、狂犬病ワクチン接種頭数451万匹を761万匹で割り、百分率に直すと、接種率は59.2%。。。

理想的な接種率70%を大きく下回り、60%にも満たない結果となってしまう。
これは、大変に危機的な状況であると言わざるを得ない。

 

では、一体、動物病院を訪れる犬の何%に狂犬病ワクチンを接種すれば、母集団の70%に達するのか?

「真の母集団」の70%は、761万匹×0.7=533万匹。
登録された犬(632万匹)だけでワクチン接種率70%を超えるとなると、533万匹÷632万匹=0.843。
実に84.3%の犬に狂犬病ワクチンを接種しなければならない。

 

今、自分自身が所属する動物病院における実際の接種率(現実)は、如何ほどであろうか。そして、その割合を約85%にまで引き上げることは出来るだろうか。忙しい予防の時期が終わった今、National Immunization Awareness Monthに合わせて、是非考えて頂けると幸いである。

獣医科大学や動物関連団体なども含めて、多種多様な組織、企業、個人が、紹介したハッシュタグを添えて、様々な意見をツイートしておりますので、夏(啓蒙月間)が終わる前に覗いてみて下さい。

 

参考ページ:https://www.cdc.gov/vaccines/events/niam/index.html

参考ハッシュタグ:#ImmunizationAwarenessMonth


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