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外耳炎・皮膚病を起こすMalassezia pachydermatisの病原性の有無を判別できる2つの酵素

投稿者:武井 昭紘

Malassezia pachydermatis(マラセチア)は、一次診療でも頻繁に遭遇する病原体で、犬の外耳炎や皮膚病を惹起する病原性を発揮することで広く認知されている真菌である。しかし、ご存知の先生方が殆どであるかも知れないが、同病原体に感染した(または同病原体を保有する)犬の全てが、押し並べて同じ症状を呈することはなく、何らかの要因によって、マラセチア感染症を①発症する個体と②発症しない個体に分かれることが一般的である。

 

それにしても、
『この差の正体は、一体、何であろか?』

ここに焦点を当てた研究が、2019年7月、ポーランドの大学らによって発表された。

 

なお、発表された研究によると、①②それぞれに該当する犬、約30匹ずつから分離したマラセチアのタンパク質プロファイルを解析したところ、①由来のマラセチアから2つの酵素(NADP依存性マンニトール脱水素酵素、ケトール酸レダクトイソメラーゼ)が検出されたとのことである。これを受け、大学らは、マラセチアには2つの異なるタイプ、要するに病原性を示す株と片利共生をする株が存在していると結論付けている。

上記のことから、マラセチアはタンパク質プロファイルによって細分化できることが、立証されたものと考えられる。よって、今回紹介した研究などに基づいて、①と②を分かつ要因がマラセチアの病原性の有無にあるという観点に立ち、新しい診断方法および治療法が開発されていくことに期待したい。

様々なアプローチによる研究が進み、マラセチアの病原性検査が数多く誕生することを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31322986


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