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英国内で飼育される短頭種の福祉を向上するための課題点を浮き彫りにしたオーナーの意識調査

投稿者:武井 昭紘

近年、イギリスにおけるフレンチ・ブルドッグの人気が高まっており、その勢いは2019年の今も衰えを知らない状況のようである。しかし、この人気の裏には悲しい陰が伴っていて、同犬種のネグレクト(飼育放棄)による保護件数の増加が大きな社会問題となっている。

そこで、冒頭に記した減少に懸念を抱いた名高い3つの獣医科大学(エジンバラ、ノッティンガム、王立獣医科大学)が、ある調査を行った。なお、大学らによると、2000匹を超える短頭種(パグ、フレンチ・ブルドッグ、イングリッシュ・ブルドッグ)対象に、実際に抱えている病気と、オーナーが抱く愛犬の健康問題意識に関して調査を進めたところ、以下に示す実態が明らかになったとのことである。

◆短頭種が抱える病気とオーナーの意識◆
・5匹に1匹は短頭種気道症候群を治療するための手術を受けている
・母集団の約37%はオーバーヒート(体内に過剰な熱がこもること)の経験を有している
・母集団の約27%はアレルギー、18%は呼吸トラブル、15%は角膜潰瘍や皺襞性皮膚炎、12%は気道閉塞(11.8%)を抱えている
・愛犬の健康状態が他の犬種よりも悪いと認識しているオーナーは約7%に留まっている
・70%を超えるオーナーが愛犬は非常に健康でベストな状態であると思っている

 

上記のことから、様々な疾患の有病率とは相反するように、短頭種のオーナーは、愛犬の健康状態に疑問を持たず、満足していることが窺える。つまり、この結果から、獣医学的に要治療と判断できる短頭種を飼育しているオーナーが、その深刻な現状に気が付くのが遅れ、病態が進行・悪化して、やっと動物病院を訪れる決意を固める実情があるものと推察できるのだ。

 

そして、想いも寄らない程に重症の愛犬を見て、ネグレクトに至る—–。

 

英国内の短頭種の福祉を向上し、ネグレクトおよび保護件数を減らすためには、おそらく、いや確実に、当該犬種の病気を早期発見する上で必要な情報をオーナーに対して、積極的に、且つ、継続的に啓蒙することが重要なのではないだろうか。

筆者の印象では、日本でも、短頭種における各疾患の有病率とオーナーの認知度には、大きな隔たりがあると思います。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/research/research-centres-and-facilities/rvc-animal-welfare-science-and-ethics/news/love-is-blind-many-owners-of-short-muzzled-dogs-are-strongly-bonded-to-their-pets-but-unaware-of-health-problems


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