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変性性関節症を罹患した犬猫に起きる悪循環を明らかにした統計学的解析

投稿者:武井 昭紘

変性性関節症(osteoarthritis、OA)は、遺伝、加齢、外傷、関節のトラブル等を原因として、主に、犬猫の肘、膝、股関節に発生する一般的な病気であり、QOLの悪化を伴うほどに、慢性的な疼痛を罹患動物に与える整形外科疾患である。故に、当該疾患では、疼痛管理による治療を施すことが大切なのは言うまでもないが、ある母集団での有病率、OAを罹患しやすくなる条件、OAに続発するデメリットなど、いわゆる「疫学」を客観的に把握することも大変に重要であり、獣医療の発展には欠かせないものだと考えられる。

そのような背景の中、自社が抱えるビッグデータを活用したアレルギー性皮膚疾患の疫学を発表したBanfield Pet Hospital(バンフィールドグループ)は、犬および猫のOAに関する統計学的解析の結果、つまり、疫学を以下の通り、ホームページ上に公開した。

◆犬猫のOAに関する疫学◆
・母集団全体に対して、約6%の犬、約1%の猫がOAに罹患している
・10歳以上の個体に限定すると、20%の犬、4%の猫がOAに罹患している
・過去10年間で、OAに罹患する個体数は、犬では約70%、猫では約150%増となっている
・OAと診断される犬の約50%、猫の約40%は、過体重・肥満である
・OAに罹患していない個体よりも、OAと診断された犬は1.7倍、猫は1.2倍過体重・肥満になりやすい
・過体重・肥満の犬は、2.3倍OAに罹患しやすい

 

これらの事実に加えて、一昨日のPet Insight Projyectの情報(過体重の犬は活動性が10~20%低下する)、そして、米国内で飼育されている犬猫の3分の1が過体重・肥満であるという試算を考慮し纏めると、

①過体重・肥満の個体は活動性が低下するとともにOAを罹患しやすく、
②OAを発症すると関節の痛みに起因する更なる活動性の低下(QOLの悪化)が生じ、
③輪をかけて体重は増加しOAは進行する

といった①~③をグルグルと回り続ける悪循環が見えてくる。

 

上記のことから、動物福祉の観点からも、獣医学的な視点からも、一般家庭で飼育されている犬猫の体重を適正(標準)に保つことは至上命題なのではないかと思われる。よって、今後、世界中のヒトと犬猫が「共に」幸せなペットライフを送るためにも、バンフィールドグループの発表を良い契機として、積極的に体重管理指導をする獣医・動物看護師、病気の予防を意識した食餌管理に取り組むオーナーが一人でも増えることを期待している。

動物病院での体重管理指導が、OAの発生を抑え込む「未来の予防医療」として、世界各地の獣医師・動物看護師に認識されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.banfield.com/state-of-pet-health/osteoarthritis/what-is-it


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