おおよその概算ではあるが、イギリスでは、総世帯数2600万件対して80万匹のウサギが飼育されているとされ、そのウサギの半数以上は、ロップイヤーと呼ばれる「耳が垂れた」品種によって占められている。
顔も体も丸く、フワフワとした毛に覆われた上に、動くたびに耳はヒラヒラと揺れるロップイヤー系ウサギの姿は、筆者から見ても実に可愛らしく、ついつい触って撫でたくなる魅力を充分に備えていると心から思え、冒頭に記した英国内での人気には、疑うすべもなく頷くばかりではある。だが、しかし、このロップイヤーに該当する品種に対して、科学的根拠は無いものの、耳と歯のトラブルを抱えやすいという印象を強く抱いている獣医師は少なくないようなのだ。
と、ここで、悪い予感が頭を過ぎる—–。
フレンチ・ブルドッグの例を念頭に置くと、人気がある動物種の陰に潜む好発疾患は、ネグレクト(飼育放棄)の温床になりやすい。
ここに懸念を示した王立獣医科大学(RVC)が、ある調査を行い、その結果を発表した。なお、同大学によると、保護シェルターに収容された①立ち耳のウサギと②ロップイヤーを持つウサギ、各15匹を対象にして、行動、耳と歯の状態を確認したところ、①に比べて②は、耳に炎症・疼痛が生じやすく、頻繁に歯科治療を必要とし、聴覚障害および摂食障害と判断できる行動変化が多く起きることが明らかになったとのことである。
上記のことから、ウサギの福祉向上を考えると、日本を含め、ロップイヤーを持つ品種をペットとして飼育する文化を有する各国において、同様の実態調査が実施されることが望ましいと思われる。また、その結果を基に、行き過ぎた品種改良に歯止めをかけるグローバルなブリーディング計画が作成されることを願っている。
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