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アトピー性皮膚炎に罹患している犬で認められる皮膚病変の分布に関する研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床において、犬のアトピー性皮膚炎(canine atopic dermatitis、CAD)は、感染や食物アレルギーを除外しながら、病歴・病変部位のチェックを行う「一定の診断基準」の項目にいくつ該当しているかによって診断が下されていくことが通例である。しかし、皮膚科診療全体の1割前後を占めるとされるアトピー性皮膚炎は、動物病院や獣医師によって、その割合は6割にも跳ね上がるとも言われており、既存の手法では激しい「診断的格差」を是正できないのが現状である。つまり、多角的な視点を持ち、診断基準の改訂を検討することが大変に重要なのではないかと思われるのだ。

そのような背景の中、オーストラリアのアデレード大学は、250例を超えるCAD症例に認められる皮膚病変が発生している解剖学的位置について、データを集積し解析する研究を行った。すると、病変が確認できた位置とその割合(全症例を100%にした時のパーセンテージ)は、症例全体(過去の報告に近似している)と、9例以上のデータが集まった品種ごとに分けたグループで比較すると、統計学的に有意差が存在しており、病変の分布パターンには品種間での差異があることが、明らかになったとのことである。

上記のことから、CADの診断基準の一部は、品種ごとに設定する必要があることが窺える。よって、今回紹介した研究を基に更なる大規模な検証が進み、「犬種別」皮膚病変分布パターンが纏められ、CADの診断精度が向上していくことを願っている。

CADをより深く理解するために、アジア、アメリカ、ヨーロッパ大陸(または世界各国)にて同様の研究が行われ、オストラリアの研究と比較されていくことを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31209859


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