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猫の肥大型心筋症に深く関与していると考えられる遺伝子変異の発見

投稿者:武井 昭紘

ヒトの肥大型心筋症(Hypertrophic cardiomyopathy、HCM)は、心不全や突然死を続発する心室筋の構造的かつ機能的異常を生じる難病(特定疾患)であるとともに、多種多様な原因遺伝子の変異が確認されていることから、遺伝病としても認識されている循環器疾患である。一方で、猫のHCMは、ヒトと同様に遺伝的要因が疑われているものの、ヒトほどに原因遺伝子の特定が進んでおらず、比較病態学・遺伝学の観点から両者が発症するHCMの相違点について、未だ明らかにされていない点が多い。

そのような背景の中、2019年6月、ベルギーのゲント大学は、血栓症で亡くなった猫の剖検をキッカケに、猫のHCMに深く関与していると考えられる新しい原因遺伝子を発見したことを科学誌natureにて報告した。なお、同報告によると、この症例では、HCMの猫で既に確認されているMYBPC3遺伝子とは別に、MYH7遺伝子において一塩基置換が起きており、その変異はHCMに罹患していない個体(200匹)には存在していなかったとのことである。

上記のことから、MYH7遺伝子の変異は、猫のHCMに何らかの形で関わっているものと考えられる。よって、この報告を基にして、猫のHCMにおける発症メカニズムの一端が解明され、将来的にHCMを発症する猫を識別するための遺伝子検査と猫のHCMに対する新たな治療法が確立されることを願っている。

MYH7遺伝子の変異は、ヒトのHCMでも報告されているものだとのことですので、ヒトと猫のHCMを遺伝子学的に比較し、解析することは、今後の獣医療の発展に大きな意味を持っているのだと思います。

 

参考ページ:

https://www.nature.com/articles/s41431-019-0431-4


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