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ヒトが発症する猫アレルギーを緩和させる可能性を秘めた「猫用」ワクチン

投稿者:武井 昭紘

一部のヒトが発症する猫に対するアレルギー、いわゆる、猫アレルギーは、Fel dと呼ばれる猫由来のアレルゲンが原因であると考えられており、Fel d 1からFel d 8までの8つのタイプが確認されている。その中でも、Fel d 1は、猫の顔,首,腋窩,尾根部などに分布する皮脂腺で産生され、猫アレルギーの主要なアレルゲンとなることが分かっているとともに、当該疾患に苦慮するヒトの多くは抗Fel d 1抗体(IgE)を有することも知られている。また、前述のような猫アレルギーは、猫が大好きなヒトにとって非常に深刻な問題であり、この病気を理由に、愛猫との付き合い方を悩んだり(猫を飼い始めて自分自身が猫アレルギーであることに気が付いたケーズなど)、猫の飼育を断念する要因となってしまう。

しかし、視点を変えれば、猫アレルギーの発症リスクを最少限に抑える医療技術が開発されれば、冒頭に記した「深刻な問題」は解決し、猫の飼育・管理を継続するために必要なアレルギー予防対策が軽減され、キャットライフを満喫できるヒトが増えつつ、猫の福祉は飛躍的に向上するのではないかと考えることができる。

そこで、2019年4月に発表されたチューリッヒ大学らのユニークな研究を紹介したい。

なお、同大学らによると、猫が持つアレルゲンを減少させることを目標に掲げ、ヒトではなく、「猫に」、組み換えFel d 1ワクチンを接種する方式を採用したところ、重大な有害事象を伴わずに、猫の体内に抗Fel d 1抗体(IgG)を産生させることに成功し、その結果として、見事、目標を達成したとのことである。

上記のことから、ワクチンによって、「アレルゲンの少ない猫」という条件を創り出すことが可能であることが示されたと言える。よって、今後、猫を飼育するも猫アレルギーに苦しむ世帯を対象に、組み換えFel d 1ワクチンの有用性が検証され、猫もヒトも幸せで穏やかな日々を過ごせる未来が訪れることを期待している。

これからも、動物が好きな世帯が、動物アレルギーを心配することなく、ペットライフを楽しめるユニークな研究が数多く行われることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31056187


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