ニュース

ノーリッチ・テリアの気道疾患を遺伝学的に解析した研究と短頭種気道症候群

投稿者:武井 昭紘

イギリスの首都ロンドンの北方に位置するケンブリッジ大学にて、ネズミ捕りを任せられていたトラピントン・テリアから派生し、ノーフォーク・テリアの親戚とも言えるノーリッチ・テリアには、フレンチ・ブルドッグなどの鼻が短い品種が罹患する短頭種気道症候群(Brachycephalic Obstructive Airway Syndrome、BOAS)に類似した呼吸器症状、いわゆる、上部気道症候群(Upper Airway Syndrome、UAS)が起きることが知られており、このUASの原因は、内視鏡の所見から、喉頭部の狭窄であるとされている。

しかし、この狭窄が生じるメカニズムは、未だ解明されていない—–。

 

そのような背景の中、欧米諸国の大学・研究所らは、400匹を超えるノーリッチ・テリアを対象に、喉頭鏡検査および遺伝子解析を行った。なお、同大学によると、UASとの関連性を有する遺伝子が第13番染色体上に存在しており、ADAM metallopeptidase with thrombospondin type 1 motif 3 (ADAMTS3)と呼ばれるものであることが判明し、加えて、このADAMTS3が変異を起こすと、気道のリンパ浮腫(lymphoedema)が発生することも確認されたとのことである。

上記のことから、ノーリッチ・テリアのUASは、リンパ浮腫の治療を検討することで改善する期待が持てるのではないだろうか。また、今回紹介した研究を基にして、短頭種におけるADAMTS3遺伝子の変異と気道のリンパ浮腫の有病率に着目した調査が進めば、BOASに対する新たな治療法・予防法の開発も実現するのかも知れない。

研究の進展次第であることは言うまでもありませんが、気道のリンパ浮腫を和らげることで、BOASの症状や短頭種の麻酔リスクが軽減する未来が訪れることを願うばかりです。

 

参考ページ:

https://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371%2Fjournal.pgen.1008102


コメントする