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生きている動物に依存しない「内視鏡検査の技術を習得するシステム」に関する研究と期待

投稿者:武井 昭紘

現在の獣医学に関する教育および研修システムでは、採血、点滴、手術などに関する知識・技術を習得するために、動物(生死は事業所の判断による)の協力が必要不可欠である。しかし、一方で、動物福祉や動物倫理の観点から、限りなく協力を仰ぐことが出来ないという「制限」が存在しており、これが、言わば、臨床現場に即した獣医師・動物看護師の教育・研修の実現を困難にする大きな壁として立ちはだかっているということも、また事実ではないだろうか。

このような背景の中、2019年4月、外科学の基礎を形作る獣医解剖学にバーチャルリアリティ(VR)を導入したテキサスA&M大学と、ノースカロライナ大学らは、小動物臨床向けに開発した内視鏡検査の技術を習得するVR「Virtual-reality endoscopy trainers (VRET) 」の有用性を検証する研究を行った。なお、同研究では、内視鏡検査に精通していない獣医師12人を、①生体を使った内視鏡検査を行う研修グループ(6人)、②VRETを使った内視鏡検査を行う研修グループ(6人)に分けて、習熟度を観察しており、両大学らによると、2つのグループに有意差は認められなかったとのことである。

上記ことから、VRETによる内視鏡検査の研修は、冒頭に記した「制限」を解消するために、非常に効果的な手法であると考えられる。よって、将来的に、VRETを用いた研修システムがガイドラインを伴って世界中へと普及し、研修に協力を余儀なくされる動物の数が激減するとともに、思う存分研修に臨める獣医師が増加することを切に願っている。

この論文には、生体と使用した時よりも、VRETを使った時の方が、研修を受ける獣医師のストレスが軽減されることも記載されております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31009293


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