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ステロイドの全身投与を受けた犬に纏わる統計学的データを算出した研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床において、ステロイド系薬剤とは、皮膚、消化器、神経、免疫系疾患など、実に多種多様な病気に最も汎用されている薬剤の一つであると言って過言ではなく、動物病院を訪れる医療系職種に従事するペットオーナーの(驚愕の)反応を見る限り、その頻度は、人医療のそれとは大きく異なるものと推察できる。故に、人医療からは独立した形で、小動物臨床での当該薬剤の使用実態を把握し、最適なステロイド系薬剤の使い方を模索することは非常に重要であり、今後の獣医療の発展と動物福祉の向上のために欠かせない姿勢であると思われる。

そこで、2019年5月に発表された王立獣医科大学の統計学的研究を紹介したい。

なお、同研究は、症例データベースVetCompassから抽出した45万匹以上の犬が対象となっており、ステロイド系薬剤の全身投与(systemic glucocorticoids、SGC)に関するデータが解析され、以下に示すような結果が得られている。

<小動物臨床における1年間のSGCの実態>
・約6%(28000匹)がSGCを受けていた
・SGCが適応される事態は50000件発生していた
・経口剤としてプレドニゾロン、注射剤としてリン酸デキサメタゾンナトリウムが最も使用されている
・最もSGCを経験したのはスタッフォードシャー・ブル・テリアであった
・SGCが適応される割合は8歳以上、ないしは、10kg台の犬で高い

上記のことから、ビッグデータの解析は、薬剤の使用実態を数値化する力を秘めていると考えられる。よって、今回紹介した研究をモデルに大学と一次診療施設が協力して、日本の動物医療業界でもSGC使用実態を解明し、SGCの使用に関するガイドラインの作成やSGCの乱用を防ぐ啓蒙活動が行われることに期待している。

SGCによる副作用の発現、治療経過・予後の変動、オーナーの心情変化なども分析され、SGCが見直されていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31076520


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