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犬の乳腺癌が転移する可能性を判定できる臨床検査を開発する試験的研究

投稿者:武井 昭紘

犬の乳腺腫瘍、特に、悪性度の高い乳腺癌は、ヒトの乳癌を研究する上で重要なヒントを教えてくれるモデルであると考えられており、人医療と小動物臨床が共に手を取って協力しながら「謎」の解明に挑める疾患の一つとなっている。故に、犬の乳腺腫瘍の研究から判明した事実はヒトへと外挿され、ヒトの乳癌の研究から判明した事実は犬へと還元されていくことが、両医療の発展には欠かせない「姿勢」であると考えられる。

そこで、本稿では、2019年2月、イタリアのパドヴァ大学が発表した犬の乳腺癌に関する試験的研究を紹介したい。

 

なお、同大学は、ヒトの乳癌における予後に深く関与しているとされる抹消血中循環腫瘍細胞数(circulating tumour cells、CTCs)に着目して、CTCsを犬の転移性乳腺癌に応用できる否かについて検証を行っており、以下に示すような結果を得たとのことである。

<犬の転移性乳腺癌におけるCTCsの有病率と数値>
・症例の40%以上にCTCsが認められる
・臨床上健康な犬からは検出されない
・CTCsの存在は症例の予後を不良にする

 

上記のことから、CTCsは、犬の転移性乳腺癌の予後を判定するマーカーとして有用であると考えられる。よって、本試験を基にして、CTCsに関する大規模な臨床研究が計画・実施され、臨床症状、病理組織検査の結果、ステージングなどとの整合性が立証されていくことを願っている。

術後経過(再発の有無の確認)にも、CTCsが活用されていくことを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30717110


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