近年、ヒトと動物の健康維持が揃って初めて生態系は保全されることを意味する「One Health」という概念のもと、狂犬病予防プログラムやフィールドトリップなど、様々な活動が世界各地で実施されていることからも明白な通り、ヒトと動物の切っても切れない「命の繋がり」が重要視されるようになってきた。また、これ(予防医療の観点からのOne Health)に対比するかのように、ある一つの治療学を共有することでヒトおよび動物の神秘や謎に迫り、相互に深い理解を得ようとする「One Medicine」という考え方も、少しずつではあるが確実に広まりつつある。
そのような背景の中、イギリスの王立獣医科大学(RVC)が、ヒトおよび犬の変形性関節症(osteoarthritis、OA)に関するOne Medicineを、科学誌Nature Reviews Rheumatology(05 April 2019)に投稿したことを同大学のホームページにて発表した。なお、下記に示すリンク先のページによると、ヒトと犬のライフスパン、生活様式、関節に生じる疼痛などには、非常に類似した点が多く見受けられるとのことで、RVCは、両者のデータを共有し、OAの発生メカニズムの詳細な解明や新しい治療法の開発に迫るとしている。
上記のことから、「One Medicine」という視点に立ち、医学および獣医学を今までとは異なるアプローチによって見つめ直すことは、今後のグローバルな医療レベルの向上にとって、非常に重要なことなのかも知れない。よって、将来を見据え、医学系大学では獣医学に、獣医学系大学では医学に触れられる機会を作ることが大切であると思われる。
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