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子宮蓄膿症に罹患した犬の子宮組織を分子生物学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

不妊手術を受けていない雌犬の代表的な病気の一つとして挙げられる子宮蓄膿症は、繰り返される発情に加え、細菌感染を伴う子宮の炎症が起因となって臨床症状が顕著となり、無治療では、炎症が全身へと波及して生じる敗血症ないしは多臓器不全で致死的経過を辿ることもある生殖器疾患である。故に、当該疾患の早期診断は大変に重要なことで、迅速に治療へと繋げる診断法が開発されれば、各症例の重症化を防ぐことが可能となり、多くの命を救うことができることは想像に難くない。

そこで、2019年3月にドイツの東に位置するポーランドの獣医科大学らが発表した「ある」興味深い研究を紹介したい。

なお、同研究では、子宮蓄膿症に罹患した個体(①)の子宮組織に着目をしており、臨床上健康な個体(②)との分子生物学的な相違点について、ウェスタンブロッティングを用いたタンパク質分画の解析が行われている。そして、その結果、①と②の子宮組織に含まれるタンパク質の分画と量が異なっていることが明らかにっており、大学らは、①の子宮組織から検出されるタンパク質が糖化していると結論付けた。

上記のことに加えて、この分画に関する差異が尿または膣分泌液にも波及するのではないかと仮定すると、将来的に、2つのサンプル(尿、膣分泌液)を用いた子宮蓄膿症の早期診断法や発症予測法の確立が期待できるかも知れない。よって、今後、本文献で認められた「相違点」を臨床へ応用するための研究が進められていくことを願っている。

今回紹介した研究を基にして、子宮蓄膿症になりやすい犬が識別できる手法が開発されれば、該当する個体のオーナーへの「不妊手術」に関する啓蒙を強化できると思います。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30939355


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