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外耳炎に罹患した犬におけるマラセチアの関与を証明する遺伝子検査

投稿者:武井 昭紘

犬の外耳炎は、感染、アレルギー、腫瘍、異物、薬剤などを原因として発症する感覚器の疾患であり、中でも、感染によって惹起される外耳炎は、多種多様な病原体の関与を鑑別し、排除していくことが、再発しにくい治療へと繋がる大きな鍵であるとされている。しかし、皮膚ないしは耳に常在する細菌・真菌と外耳炎の関連性を証明する定量的な臨床検査は、充分に確立されているとは言えないのだ。

そこで、スペインのバルセロナ自治大学は、外耳炎の犬におけるマラセチアの定量に関する遺伝学的研究(PCR法)を行った。なお、同研究では、M. pachydermatisのβチューブリンをコードする遺伝子をターゲットにして、綿棒で採材したサンプルからDNAの増幅を試みており、その結果、臨床上健康な犬では2.7×10000 gEq以下のDNAが検出されることに対して、外耳炎を呈する個体では桁が1つ違っており、2.5 × 100000 gEq以上のDNAが認められることが明らかとなったとのことである。

上記のことから、本研究で用いられた定量的PCR法は、外耳炎へのマラセチアの関与を証明・否定する検査法として有用であるかも知れない。よって、今後、この遺伝子検査が、外耳炎の重症度、治療への反応性、再発のしやすさなどの観点から詳細に解析され、マラセチア性外耳炎の確定診断法(または除外診断法)として発展を遂げることを期待している。

今回紹介したPCR法が商業化されれば、マラセチアと外耳炎の関連を悩む新人獣医師とって、非常に利便性の高い検査となるのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30943876


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