ベトリントン・テリア、ラブラドール・レトリバー、ダルメシアンなどを始めとする犬の肝臓疾患の一部には、肝組織に銅が蓄積する病態(銅関連性肝炎、Copper-associated hepatopathy、CAH)が深く関与していると言われており、銅のキレート剤(例:ペニシラミン)を治療薬として使用することが一般的となっている。しかし、この手法によって全ての症例が一命を取り留められる訳ではなく、より効果的な、より適切な治療法の開発を成し遂げることは、今後、獣医学が克服すべき課題として残されているのが現状である。
そこで、ミシガン州立大学は、CAHに罹患した犬10例を対象にして、腸管における銅の吸収を抑制するテトラチオモリブデン酸アンモニウム(Ammonium tetrathiomolybdate、TTM)の効果を検証する研究を行った。すると、6週間のTTM投与によって、8例(80%)の犬で肝臓に含まれる銅濃度が有意に減少したとのことで、同大学は、犬のCAHに対するTTMの有用性が確認できたと結論付けている。
よって、上記のことを契機として、将来的に、TTMを用いた犬のCAHの治療法が確立されれば、当該疾患の治療期間や治療成績に大きな変革を齎すかも知れない。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30883912