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ヘルペスウイルスをベクターとして利用した新しい「猫用」狂犬病ウイルスワクチンの開発

投稿者:武井 昭紘

世界各地において年間5~6万人の犠牲者を出す危険な感染症である狂犬病は、清浄国とされている日本の隣国、中国でも発生しており、全体の5%にあたる狂犬病感染者は、何と、猫からウイルスを伝播されていると考えられている。つまり、犬のみならず、猫に狂犬病ウイルスワクチンを接種することが、効果的な予防医療の一つになり得ると推測できるとともに、OneHelthの実現へも繋がる防疫対策としても期待できるのだ。

そこで、アメリカ疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)および中国の研究所は、猫用の狂犬病ウイルスワクチンを開発することを目標に掲げて、猫ヘルペスウイルス(FHV-1)の遺伝子の一部を狂犬病ウイルスの糖タンパク質を発現する遺伝子に組み換えたワクチン(FHV-based recombinant vaccine)を作成し、その効果を検証する研究を行った。すると、同ワクチンを鼻腔内接種した猫において、FHV-1に対する抗体は勿論のこと、狂犬病ウイルスに対する抗体(接種後14日までに0.5IU/mL以上)が産生されることが明らかになったとのことである。

上記のことから、FHV-based recombinant vaccineは、一つのワクチン株で「狂犬病」を含む2つの感染症を予防するワクチンとして、大変に有用であると思われる。よって、今後、この組み換え型ワクチンのウイルス株が、世界各地で流通している猫用の多価ワクチン(混合ワクチン)にも応用できるかについても検証され、新しい混合ワクチンが開発・流通されていくことを願っている。

ストリートキャットへのワクチン接種を念頭に置いた「経口型」FHV-based recombinant vaccineの開発も行われることに期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30878247


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