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猫の前十字靱帯断裂に対する治療法と経過を統計学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

猫の前十字靱帯断裂(cranial cruciate ligament disease、CCLD)は、犬のCCLDよりも小動物臨床で遭遇することが少ない整形外科疾患であり、犬と同様に靭帯再建などの外科手術を施すか、保存療法にて経過観察を行うかについて、現在でもなお、統一された見解はなく、議論の余地が残されている現状にある。

そこで、本稿にて、北欧の獣医科大学らが発表した報告を紹介したい。

なお、同発表では、過去5年間に2つの大学病院を訪れたCCLDを罹患した猫50匹が受けている疼痛を、オーナーの協力を得てFeline Musculoskeletal Pain Index (FMPI)というスケールで評価するとともに、①保存療法群と②外科手術群に区分して経過観察(CCLD診断後から中央値41ヶ月間)が実施されている。その結果、両群におけるFMPIには有意差が認められ、②よりも①の方が低い値を示すことが明らかになったとのことである。

上記のことから、猫のCCLDには、保存療法を適応することが望ましいものと思われる。ただし、外科手術によって臨床症状が改善する症例も報告されていることも事実であるため、保存療法と外科手術のどちらが奏効するかを左右する「何らかのファクター」が存在している可能性は否定できない。よって、今後、両治療法の優劣を考える視点から脱却し、前述したファクターを探る研究が進められることに期待したい。

猫のCCLDの臨床症状および経過を評価する「世界的に統一された」専用スケールを作成することが、議論の余地を残さない結論に達する近道になるのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30896333


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