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犬の前十字靱帯断裂における術前から術後の経過を客観的に評価するインデックス

投稿者:武井 昭紘

犬の前十字靱帯断裂(cranial cruciate ligament rupture、CCL rupture)は、膝関節を構成する大腿骨と脛骨を結ぶ前十字靭帯の一部ないしは完全な断裂に起因する整形外科疾患で、罹患犬に激しい疼痛を与え、破行と、それ続くQOLの悪化を生じる特徴を有する。故に、最も効果的な治療法として膝関節を安定させるための外科手術が適応されるのだ。しかし、術後の経過、つまり、改善しているか症状に変わりないかについての評価は、術者の主観が強く反映さるため、オーナーや新人の獣医師にとって客観性に乏しいという現状がある。

そこで、イタリアのボローニャ大学は、犬のCCL ruptureにおける手術前後の経過を客観的に評価する研究を行った。なお、この研究では、同大学が作成したthe Bologna healing stifle injury index (BHSII)というインデックスを用いており、150匹を超える罹患犬の膝関節を5つの項目(文献をご参照下さい)で数値化し、それらを総合した一つの指数を算出している。すると、その結果、術後のBHSIIが、術前のスコアよりも有意に上昇し、オーナーに協力してもらったアンケート(経過に対する印象)とも正の相関関係にあることが確認できたとのことである。

上記のことから、ボローニャ大学のBHSIIは、犬のCCL ruptureの経過や外科手術の成績を客観化できる有用なツールだと考えられる。よって、今後、一次診療施設でも高い再現性を持って実践できるように、BHSIIに関するガイドラインが作成されることを期待している。

今回の文献のように、様々な整形外科疾患の術前・術後の経過を数値化し、高い客観性を持たせる研究が数多く行われることを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30891453


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