小動物臨床における肝障害に起因する症状は、新人獣医師を大いに惑わせる程に「非特異的」であり、原則、多岐に渡る疾患の鑑別には、纏まった医療費をオーナーに掛けてもらい、且つ、侵襲的に精査を進めることが求められるのが現状である。故に、動物に負荷を強いらないために、生検や外科手術などの侵襲性の高い方法を避け、採血などの侵襲性の低いサンプル採取にて測定できるバイオマーカーの開発が常に望まれている。
そこで、テキサスA&M大学は、生体内に発生する代謝産物を分子生物学的に解析するメタボロームを用いて、以下に示す3群の相違点を模索する研究を行った。
<メタボローム解析の対象となった3群>
①臨床上健康な犬
②先天性門脈体循環シャントの犬
③慢性肝炎の犬
すると、3群の間にて、50種類にも及ぶ代謝産物の量が有意に異なっており、特に、②では芳香族アミノ酸およびキシリトールが増加することが明らかになったとのことである。
上記のことから、メタボローム解析により、「肝障害鑑別マーカー」の確立は現実味を帯びたものと思われる。よって、本研究を基にして更なる検証を重ね、一次診療でも利用できるバイオマーカーが数多く発見され、商業化へと進展していくことに期待している。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30891842