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猫の糖尿病と腸内細菌叢の変動について着目した遺伝学的研究

投稿者:武井 昭紘

猫の糖尿病(feline diabetes mellitus、FDM)は、母集団の約1%(1000匹に11.6件)に発生する代謝性疾患で、インスリン抵抗性、つまりヒトの糖尿病で言えば、2型糖尿病(human type II diabetes mellitus、T2DM)に近似した病態を呈するとされている。しかし、人医療で食生活や運動習慣と関連しているT2DMに対して、FDMと食生活、FDMと運動習慣の間にある因果関係を具に解明した研究は少なく、今後の獣医学が抱える課題の一つとなっている。

そこで、ヨーロッパの大学らは、様々な体型の猫とFDMに罹患した猫を対象にして、糞便サンプルを用いた腸内細菌叢の遺伝学的解析(16SrRNAの配列決定)を実施した。すると、FDMに罹患した猫の腸内細菌の種類は、他の猫と比べて多様性に乏しく、特にルミノコッカス属の細菌が減少していることが判明したとのことである。また、同大学らは、血清中フルクトサミン濃度と腸内細菌叢にも着目しており、フルクトサミンが、プレボテラ属と負の相関、エンテロバクター属と正の相関をしていることも突き止めている。

上記のことから、食餌管理を含めた腸内細菌叢を変動させる何らかの要因が、FDMの発症に関与している可能性があるものと考えられる。よって、今回紹介した研究が更なる発展を遂げ、FDMを予防するプレ・プロバイオティクスの確立、FDMの治療成績を向上させる新たな療法食の開発がなされることを期待している。

血清中フルクトサミン濃度を下げるプレ・プロバイオティクスが、FDMの病態進行を喰い止めることが出来るか否かについて検証されていくと、将来的に、効率の良く、且つ、安全性の高いFDMの管理が実現するのかも知れません。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30886210


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