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大型犬を襲った神経症状を伴う「謎」の大脳病変の影に潜んでいた意外な病気

投稿者:武井 昭紘

犬の骨肉腫(osteosarcoma、OSA)は、中年齢以降の大型犬で発生しやすい傾向にあり、筋骨格や関節の破壊するように組織を拡大しながら、罹患動物に疼痛を与えつつ、肺転移をも起こす腫瘍性疾患である。故に、この悪性腫瘍では、患部を抱える四肢の切断術を検討するとともに、転移病巣によるQOLの変動を観察する必要があるとされている—–。

 

2019年3月、このような特徴を有するOSAに、新たな見解を追加する症例報告がなされた。

なお、イギリスの動物病院らによると、オールド・イングリッシュ・シープドッグ(9歳齢、去勢雄)に意識障害、視力障害、半側空間無視(体半分からの刺激に無反応な状態)を認めたことから、頭部のMRI検査を行ったところ、脳実質内に病変を発見したとのことである。また、残念ながら、この症例が生存中に確定診断に至ることはなかったが、同大学は、罹患犬を剖検しており、脳の病変および右上腕骨からOSAを疑う病理組織検査の結果を得たことを受けて、前述した一連の神経症状は「骨肉腫の脳転移」に起因すると結論付けている。

上記のことから、原因不明の神経症状を呈する個体に遭遇した獣医師は、鑑別リストに①骨肉腫と、それに続発する②脳転移を挙げておくことが重要であると思われる。

症例報告の著者の知る限り、骨肉腫の脳転移は、今まで報告の無い現象であるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30864172


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