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スパニッシュ・グレーハウンドに起きる「びっくり病」の原因遺伝子を特定した研究

投稿者:武井 昭紘

本稿で紹介する文献のタイトルに記載された「startle disease」とは、過剰驚愕症、あるいは、びっくり病とも呼ばれる神経系疾患であり、グリシン作動性神経伝達の異常によって、聴覚または触覚への刺激に起因する筋緊張と呼吸困難を呈する病気として知られている。また、当該疾患は、シナプスでの神経伝達に関わるグリシンの輸送系ないしは受容体をコードする遺伝子の変異とされており、ヒト、イヌ、ウシ、マウスなどで発症すると考えられているが、イヌの「startle disease」の全容は、未だ解明されていない。

そこで、アメリカおよびスペインの大学らは、「startle disease」に罹患したスパニッシュ・グレーハウンド(イングリッシュ・グレーハウンドの祖先)を中心に、600を超えるイヌの全ゲノム配列を解析する研究を行った。すると、常染色体劣性遺伝の様式に沿って、罹患犬とその家族において、グリシントランスポーターをコードするSLC6A5という遺伝子のフレームシフトが検出されたとのことである。

上記のことから、本研究のように、感覚刺激に対する「過剰な驚き」を伴った神経症状を呈する個体では、グリシン作動性神経伝達に関与する遺伝子の異常を精査することが、原因追究の一助となるかも知れないと考えられる。また、本研究をキッカケにして、スパニッシュ・グレーハウンドの「startle disease」を撲滅するためのブリーディング計画が実行されることを願っている。

罹患犬と血縁関係の無いスパニッシュ・グレーハウンドには、SLC6A5遺伝子のフレームシフトは確認できなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30847549


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